東京地方裁判所 昭和53年(ワ)11446号 判決 1979年7月23日
原告
新潟醸材株式会社
右代表者
片山聞造
被告
日本流通株式会社
右代表者
唐木澤光
右訴訟代理人
池田眞規
主文
1 被告会社の昭和五三年八月三一日の定時株主総会における第四期(昭和五二年七月一日から同五三年六月三〇日まで)の決算報告書(営業報告書、貸借対照表、損益計算書、損失金処分案)を承認する旨の決議を取消す。
2 訴訟費用は被告会社の負担とする。
事実《省略》
理由
一請求の原因第一項の事実は、当事者間に争いがない。
二<証拠>によると、被告会社の昭和五三年八月三一日開催にかかる定時株主総会の全株主に対する招集通知は、同年八月一八日一括して普通郵便に付されたことが認められ、これを覆えすに足りる証拠はなく、右事実によれば、本件決議をした株主総会は、その招集通知が商法二三二条一項に定める期間より二日遅れて発せられた手続上の瑕疵があるものといわなければならない。
三ところで、被告会社は、本件請求を裁量棄却すべきである旨主張するので検討するに、株主総会招集の手続またはその決議方法の瑕疵が重大でなく、かつ決議の結果に影響及ぼさないと認められる場合には、決議取消の請求を棄却できると解すべきであるが、招集通知の法定期間に関する前記商法の規定は、株主が総会前に十分熟慮してその議決権を行使できるようにはかつたものであるところ、本件の招集通知は、すべての株主に対して法定の招集期間に二日も足りない期日に発せられたものであるというのであるから、本件株主総会招集の手続にはその性質及び程度から見て重大な瑕疵があるものというべきであり、また、これが直ちに総会決議の結果に影響を及ぼさない瑕疵ということもできない(なお、<証拠>によると、被告会社は、昭和五四年三月二八日に臨時株主総会を開催し、主文第1項掲記の決算報告書を再度承認する旨の決議をなしたことが認められるが、さらに右証拠に徴すれば、右臨時株主総会における第二の決議は、本件決議が本件確定判決によつて取消されることを条件として、その効力を生ずるものと認めるのが相当であるから、原告は本件決議の取消を求める利益を失わないものというべきであり、また、被告会社が主張する原告の濫用目的による本訴提起に関する主張を認めるに足る証拠もない。)から、被告会社の主張は採用しない。
四以上のとおり、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(伊藤博)